エンジンオイルの概要
それは
・減摩
・緩衝
・清浄
・密封
・防錆
・冷却
です。
これらの項目全てにおいて、必要な性能を満たしていればエンジンオイルとして問題ありません。そして一般に流通しているオイルはこれらの項目を満たしていると言えます。ただし、それは一般的な運転においての話であり、モータースポーツ用途となると話は別です。
モータースポーツでは高回転を多用するため、減摩や緩衝に問題が発生します。油膜が切れて金属同士が直接接触し、破壊が起きます。それを回避するためには、油膜をきっちりと保持しなくてはなりません。
油膜を保持できればそれはモータースポーツ用途としても適正と言えます。しかし本当のレース用エンジンなど徹底的に詰めなければならない次元や、メーカーの実験の世界になってくると、ほとんど同じオイルであるはずなのに片方は問題なく、もう片方はブロー、なんてこともあるほど未解明な部分が残っていることは覚えておいても損はありません。
以上がエンジンオイルの概要です。
では、油膜を保持する方法を考えてみましょう。
ユーザーレベルでできることは大きく分けて三つあります。
まずオイルの粘度を上げること、次に性能の高いベースオイルを使うこと。三つ目はオイルの温度を管理することです。
オイルの粘度を上げる
まず給油についてです。粘度を上げる事は油膜の保持に効果がありますが、給油に障害が出る可能性があります。問題は特にクランクピンで起こります。クランクピンは高回転エンジンにおいて最も潤滑が厳しい箇所です。
クランクピンへの給油は細く長いオイルラインを通ってくるため、粘度が高いとスムーズに給油されなくなってしまいます。給油が適切に行われないと、クランクピンの潤滑はもちろん冷却にも問題が出てきます。負荷が大きいにも関わらずクーラントが届かないため、潤滑ができているのであればオイルはジャバジャバ流しクランクピンを冷却したほうが良いでしょう。
次にフリクションについてですが、粘度が上がればフリクションが増大します。そのぶんエンジンのパフォーマンスを損なうことになります。
上記のように、闇雲に粘度を上げることはエンジンにとって好ましいことではありません。
性能の高いベースオイルを選ぶ
近年では精製技術が非常に高く、鉱物油でも不純物はほとんど含まれていません。従って、ベースオイルにこだわる必要はないという意見もありますが、それはあくまでシティユースでの話です。
化学合成油は油膜の保持力が高いのが特徴です。従って、粘度を上げずに油膜を保持できるのでモータースポーツとしては有利に働きます。その差を埋めるべく鉱物油には高分子ポリマーが多量に添加されることが多いのですが、これは高温時にはあっさりと剪断されサラサラになってしまいます。高温・高回転時の油膜保持力はやはり化学合成油に軍配が上がります。
また、バルブステムのガイド部はオイルが出て行く先がないので燃え尽きえるように設計されています。従って、ここに分子構造の不揃いな鉱物油が入り込むと燃え残りが発生し、スラッジとして貯まります。これがバルブガイドシールを痛める原因になると林教授は著書で書いていますが、影響は比較的軽微であるようです。
以上、サーキット走行においては保険として化学合成油を選んでおくべきでしょう。反対に、それ以外では化学合成油のメリットを享受できることはないと考えて問題ありません。
オイルの温度管理
まとめ:オイルの選び方
シティユースでは市販されているほぼ全てのオイルが要求性能を全て満たしていると言えます。従って問題となるのはメーカーの指定粘度と劣化です。指定された粘度をまもり、定期的な交換をすれば問題が起こることはありません。高価なオイルのメリットを享受することはできないので、安価なオイルを選ぶべきです。フィーリングを求めるのであれば指定粘度内で粘度を下げることが最も有効かつ安価な方法です。
サーキット走行を視野に入れた場合は、油膜の保持を念頭に適切なオイルを選ぶ必要があります。油膜の保持力は極力ベースオイルで確保し、粘度上昇は最低限にするのが望ましいと言えます。また油温の上昇はあらゆるオイルの潤滑性能を著しく損なうため対策が必要です。
以上。
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