2014年5月27日火曜日

フラットトルクの正体

このごろ海外で流行っている小排気量ターボエンジン。
カタログ値を見ると最大トルク「175(17.8)/1,400‐4,000」なんて書いてあります。

最大トルクが1400rpmで出るなんて! と思う方や、1400-4000rpmで最大トルクが維持されるなんて!と思う方は多いと思います。

残念ながらエンジンのような複雑な機械で、そんなことは出来ません。
これは最大トルクではなく、電子制御でトルクカーブをまっ平らに削っただけです。


従って、本来の最大トルクはもっと高回転側です。
その最大トルクを削ったため、カタログ上の最大トルクが極低回転側になっただけです。


そもそもこの手のエンジンは、全体的に電子制御でトルクが管理されています。
基本的にはドライバビリティ(運転のしやすさ)や燃費のためですが、上図の緑の部分――削られた部分は別の理由があります。

その理由は駆動系であることがほとんどです。駆動系が壊れないようにピークトルクを制御して保護しています。駆動系を強化すればもっとトルクを出すことが出来ますが、以下の理由により行いません。

・そこまで高いトルクが必要でない
・駆動系を新設する予算がないか、あっても見合わない
・フラットにしたほうが乗りやすい

と、こんなところです。

するともっと排気量を下げられそうですが、タービンが回っていない状態のドライバビリティが著しく悪化するため、ある程度の排気量を確保してNA領域のドライバビリティを補った結果です。


これらの小排気量ターボエンジンは、ハイブリッド技術のないメーカーの悪あがきのひとつと言えるでしょう。ただしハイブリッドより運転していて楽しかったり、巡航時の燃費に有利だったりと、ハイブリッドとは違う利点があるので存在価値は多分にありますし、欧州のニーズとも合致しているのではないでしょうか。

そもそも技術とはそうやって発展してきたものなので、悪あがきもバカにできませんね。

2014年3月16日日曜日

トルク型のエンジンなんて無い

やっぱり実用エンジンはパワーじゃなくてトルクだね。なんていってる人、要注意です。

トルクと出力(馬力)の理解を深めると、エンジンがより良く分かります。
カタログを読んで得られることも増えます。

今回はトルクと出力の関係を出来る限り簡潔かつ正しく解説したいと思います。


まず、トルクと出力には絶対的な関係があります。それが以下のような式です。


出力 = 2π × 回転数 × トルク


です。

読まなくてもいい注釈
(この式はSI単位系に基づいた式です。psなどの工業単位系では少し違う式ですが、そんなことはどうでもいいので気にしないで大丈夫です。)

細かい事は気にせず、この式が意味することをもっと簡単に表してみるとこうなります。


出力 = トルク × 回転数


です。大体こういう関係なんだなと覚えておけば問題ありません。

例としてこんなエンジンを用意してみました。
全ての回転域で同じトルクが出るエンジンです。


トルク × 回転数 で出力なので、回転数が高ければ高いほど出力も上がります。

実際のエンジンではこのようなトルク特性を出すことは現実的ではありません。電子制御の場合を除き、トルクカーブ(赤い線)は山形を描き、ピークトルク点がどこかに存在することになります。

トルクカーブの山を高回転側か低回転側、どちらに持ってくるかによってエンジン特性が決まります。そして、トルクカーブが決まれば、出力は先の式によって自動的に決まります。

つまり、トルクカーブが提示されていれば出力は誰でも算出できます。
どこにトルクを振るかという作業の結果が出力なのです。

次に、トルクカーブをどちらかに振った場合を見ていきましょう。
まずは高回転にトルクを振った場合です。


これは比較的分かりやすいのではないでしょうか。
高い数値に高い数値を掛ければ、すごく高い数値が出ます。
従って、図のように最大出力はとても大きな値を示します。


ではトルクを低回転側に振った場合はどうでしょうか。

トルクを振った低回転側の出力が大きく上昇……していません。確かにトルクは高いのですが、回転数が低いのでそこまで大きな出力は得られないのです。高回転側も、折角回転数が高いのにトルクが低いので出力も控えめです。

以上のように、どうせ同じトルクなら高回転で出したほうが高い出力を得られます。

であれば、エンジンは高回転型が正義かと言うとそうでもありません。理由はお察しのとおり、使わないからです。F1のようにビュンビュン回してコンビニに突っ込んだら大変なことになります。

一方スポーツカーであれば高回転にトルクを振ることになります。サーキットなら出力は高いに越したことはないからです。ところが街乗りもするでしょうから、低回転側もそれなりにトルクを厚くするという離れ業を今日のエンジニアはやってのけます。

読まなくてもいい注釈
昔のエンジンで特に尖った物は、低回転側にイエローゾーンが設定され実用上支障をきたすようなものでした。3500rpm以下はガクガクで使い物にならなかったそうです。スズキ・フロンテSSですね。すばらしい車です。


と言うわけで、上図2つの出力だけを重ねてみました。


それぞれが求めている領域の出力に、マッチしていると思います。

ただし細かい話をすればエンジン特性の設定はこんな簡単な話ではありません。
例えば街乗りで使う領域の中でも、更に細かく「どうトルクを振るか」微調整が続きますし、同じトルクでもすぐに出るかどうか(いわゆるレスポンス)によっても運転のしやすさは雲泥の差です。サーキットの領域となれば更に繊細です。


いずれにしろ、「パワーは無いがトルクがあるので加速が良い」なんて言葉は意味不明だと理解していただけたと思います。


もっとも、誤解が始まった理由は別にあります。
私は誤解の原因を「正しく理解した人同士が省略して話していたのを、理解の無い人が文面どおり受け取ってしまった」のではないかと推測しています。

新しい知識を手に入れると分かった風にひけらかしたくなるのが人間と言うものです。
それをあまりにも攻撃的に非難するのもひどい話ですが、誤解したまま話すのも恥ずかしいですね。

2014年3月2日日曜日

論文を読もう

車好きに限らず、さまざまな趣味でお互いの主張がぶつかることってよくあると思います。

しかし車好きのぶつかり合いは特に酷い気がしてなりません。なぜだろうと考えてみたのですが、どうやら双方共に正しい知識を得ていないことが原因のようです。

今回は、「正しい知識とは何か」「どうやって得るのか」について書いてみました。

正しい知識とは何か

何をもって正しい知識とするかですが、機械であれば科学的に実証された事が正といえるでしょう。科学的に実証とは、仮説から始まり、実験、検証、再現という手順を踏んで誰がやっても同じ結果が出る自然の摂理だと証明された状態です。

これらには大変なお金が掛かります。そこらの整備工場の「シャシダイで検証しましたー」とはレベルが違います。あらゆるセンサーを使用し物凄く厳密にイコールコンディションで測定されます。

従って我々素人がいくら口上を垂れ、実際に加速がよくなったんだと主張したところでそれはなんの証明にもなっていないことを知らなければなりません。

しっかりと検証された技術は、我々が触れられるような既存の物の場合、論文として明確に文書化してあります。また更に古い仕組みの場合は書籍としてまとめられているでしょう。

このように、正しい知識と言うのは莫大な労力と費用と時間を費やして研究者たちが必死に解き明かしてきたものです。それらを雑誌一冊やネット検索で得られると考えるところに過ちの一端が垣間見られます。


どうやって得るのか

もっとも確実なのはベテランの開発者に聞くことですが、それは非現実的です。やはり基本は論文と書籍です。

論文はすこし見つけづらいかもしれませんが、あるところにはあります。ネットでも上手に検索するとPDFで閲覧できるものが出てきます。

書籍を選ぶ際は、カーグラフィックやモータファンではだめです。雑誌は紙面の都合や可読性を重視して内容が編纂されてしまっています。また書いているのがエンジニアではなくライターであることも信用を落としています。

出来れば学術書、或いはそれに準じたものでも著者をしっかりと選べば信頼できる知識が得られるはずです。著者がどんな環境でどんな研究開発を行っていたのかをみて書籍を選びます。有名な完成車メーカーで自動車エンジン開発をしていれば信用できますが、例えばずっとサービス(メカニック)でやってきたという経歴であれば、整備に関しては信頼できますが技術に関しては信頼すべきではありません。

これらの資料は用語も難解で読むだけでも大変です。未知の事を学ぼうというのですから当たり前です。

そこまでする必要はあるのか

ありません。

趣味なのだから楽しくやりたい。小難しいことを抜きにしよう。と言う意見には大いに賛成です。上述した苦労は研究者の仕事であって趣味として嗜む人間の仕事ではありません。

ただし、得られる知識もそれ以上にはならないことを肝に銘じておくべきです。
自分の知識は誤っていたり表面的であったりすることを自覚し、より高次の知識に触れた際にそれを真摯に受け止めることが出来ないのであれば、やはり口を慎むべきです。

2014年1月30日木曜日

エネチャージって何?

最近盛んにCMで聞くエネチャージ。これって何でしょう。

ざっくりと言ってしまえば「ハイブリッドカーの簡単で安いところだけ使いました」って感じです。

しかしその簡単で安いところがハイブリッドカーの根幹を成しているので、なかなか効果があったりします。エネチャージとハイブリッドカーを比較しながら解説してみましょう。

エネチャージって?

エネチャージとは「熱として捨ててしまうエネルギー」を電気として回収し、再利用する機能です。「熱として捨ててしまうエネルギー」とは何でしょうか。それには「ブレーキ」が大きく関わっています。

知らなきゃエコカーは理解できないブレーキの基本

ブレーキは「車の持つ運動エネルギーを熱エネルギーへ変換する装置」です。この仕組みにより車から運動エネルギーを奪い、結果として車が止まります。

ところがこれが大問題です。せっかくエンジンで得た運動エネルギーなのに、熱にして大気に捨ててしまうのです。実にもったいない。

ハイブリッドカーやエネチャージは、運動エネルギーを熱として捨てるのをやめて電気として回収しようとする車です。


電気としてためたエネルギーはどうするの?

上記のように、ハイブリッドカーやエネチャージは本来捨ててしまうエネルギーを電気として蓄えました。蓄えたエネルギーをどうするのでしょう。

ハイブリッドカーの場合

ハイブリッドカーは、ご存知のとおり電気で走ります。電気で走った分は燃料を使いません。燃料を使わない分、燃費がよくなります。これがハイブリッドカーです。

エネチャージの場合

エネチャージは電気で走ることは出来ません。では蓄えた電気をどうするのでしょうか。

答えは「電気は電気として使う」です。現代の自動車は、例えガソリン車であっても電気を良く使います。例えばスパークプラグやブレーキランプなどが分かりやすいですが、他にもコンピュータがたくさん積まれていたり、オーディオも電気で動いていますね。

電気で走れなくても使い道はあるのです。ガソリン車ではエンジンの補機で発電した電気でこれらの電装品を動かしますが、エネチャージは回収した電気でまかなう事が出来ます。

エネチャージのメリットとデメリット

エネチャージの仕組みは理解していただけたと思います。
ではハイブリッドと比べてどうなんでしょう。

エネチャージのメリット

メリットは安い!これに尽きます。電気で走ることが出来ない=電気で走る仕組みが要らない、です。ハイブリッドカーと比べて安上がりです。

エネチャージのデメリット

デメリットは、ハイブリッドと比べて効果が少ない事です。「電気で走る」ということは物凄い量の電気を使います。それと比べると車の電装品が使う電気の量は知れています。
従って、ハイブリッドカーは大量の電気を回収し大量に使えるのに対し、エネチャージは少しだけ回収して少しだけ使う、という仕組みになってしまいます。

エネチャージから学ぶこと

エネチャージとハイブリッドカーを比べて分かる事があります。
それは「ハイブリッドカーは電気で走るから燃費が良いわけではない」という事です。

捨ててしまうエネルギーを回収して再利用できるから燃費が良いのであって、その使い道は何だって良いのです。たまたま電気で走る以外に選択肢がなかっただけです。

すると、エコカーの向かうべき道が見えてきますが、それはまた別の機会にまとめたいと思います。

2014年1月15日水曜日

東京オートサロン感想

東京モーターショーが拍子抜けするほど詰まらなかったので、オートサロンに行ってきました。個人的な嗜好と合うというのもありますが、こちらの方が遥かに面白かったのでご紹介。

会場はこんな雰囲気。モーターショーと比べ煌びやかです。会場が幕張メッセと言うこともあり、モーターショーより規模が大きいという逆転現象が。会期は3日ですけどね。


オートサロンのメインコンテンツは、ここ数年はミニバンとハイエースのドレスアップとオーディオ系だったのですが、86の登場により一変。スポーツカーがメインへと返り咲きました。これは嬉しい誤算。そして予想通りの86祭りです。

映っている5台全て86!
これにつられて他のメーカーもスポーツカーを出してくれることを願っています。

旧車もまだまだ人気があるようです。
L型の3連ツインキャブ!
オートサロンはレーサー気取りの良い子ちゃんのためのイベントではありません。従って、このように美しさ重視のエンジンルームなんていうコンテンツが成立するのも面白いところです。「これ効果あるの?」なんていう無粋な奴は「サーキットから出てくんな!」という雰囲気です。

そんな反社会的なイベントにも関わらず、近年は大手メーカーも力を入れるようになってきました。
トヨタはブランド別に5ブースと圧倒的。日産はミハエル・クルム選手のトークショー、ブリジストンも謎のショーを開催するなど、モーターショーより盛り上がってたんじゃないかなぁ。

ミハエル・クルム選手


謎のショー。昔はモーターショーでもよく見かけました。
 スポーツカーを持つトヨタと日産は大盛況。コペンを発表したダイハツもなかなか。一方ホンダはS660を持ってしても空気。確かにコペンのほうが気になった。
それもそのはず。ダイハツはモーターショーとは違うバージョンを2つ用意し、開発者のトークショーを開催。絶対に負けられないという気迫を感じます。今年のトヨタグループは本当に圧倒的です。



マツダとスバルは華のある車が不在で、コンテンツ不足に苦しんでいました。しかしブースはしっかりでやる気は充分。特にSTiは物販も用意していい熱気。
「SUBARU」の看板より「BOXER」の看板が目立ったあたりも、意地を感じました。
もう一ヶ月後ならWRXを展示できただろうに!
WRXありましたw

BRZも「トヨタ車」というのが定着しつつある。なんて不憫な! スバルをもっと見てあげて!

そしてお待ちどおさま。オートサロンといえばこれです。
来て良かったと思う瞬間。
決してこれを目的に来たわけじゃないけれども、これがなきゃ寂しい。群がるカメラ小僧も風情というもの。
そして今年も恒例のキラキラしたあいつらが来てました。



というわけで、メンバー3人のベストショット集。

ショーカー用の特殊塗装。
革張り!
車も女も目力!

蛇柄。本当に凸凹してます。

なんかいい。これぞって感じ。

眩しい! 見た目は意外とチープなんですが写真栄えが凄い。

BRZはスバルの車です! ここテストに出ます!
会場は華やか。
美しさ重視。



このあたり物販に使えるレベル。
トミーカイラが洒落っ気を出してる件。

何をしに来たか忘れる瞬間。

以上、来年からはこっちに行くぜ!

2014年1月11日土曜日

SUVを買うメリットは無い

SUVというとオフロードのイメージがありますが、本当にそうでしょうか。他にもSUVにはさまざまな疑問が残ります。今回はこれらをまとめてみました。

消費者がSUVに期待していること

SUVを買った理由を尋ねると「皆でキャンプやスキーや云々」という、まるで台本があるかのような答えが返ってきます。ぼんやりと、皆が何に期待しているのかと言うことが分かります。

しかし、SUVでなければ辿り着けないスキー場やキャンプ場がこの国にあるでしょうか。
SUVで「新たに可能になる事」は、ひとつもないのです。

おおよそこんな感じです。

・SUVは燃費が悪い
・SUVは5人しか乗れない
・SUVは荷物が載らない
SUVは悪路を走れない

SUVは燃費が悪い

これは説明不要だと思います。重く大きな車の燃費がよくなろうはずがありません。
ハイブリッドですら20km/L前後。ガソリン車のカローラと同じです。
SUVでないハイブリッドだと30km/L程度です。


SUVは5人しか乗れない

7人乗れるSUVはほとんどありません。
ランクル・プラド、エクストレイル、アウトランダー、数えるほどしかありません。
そして多人数乗るならミニバンのほうが快適です。

SUVには荷物が載らない

ほとんどのSUVは荷物を載せるとこうなります。
2人しか乗れなくなりました。これで良いのであれば、ワゴンや軽だって出来ます。
参考までに筆者のセリカでもリアをたたんで良いのであれば、タイヤ4本と自転車二台が同時に入りました。

SUVは悪路を走れない

SUVの取扱説明書には必ずこのような記載があります。
“オフロード走行やラリー走行用ではありません” (引用元-エクストレイル取説P97)

そのとおりなのです。
SUVにオフロードを走破する機能はありません。オフロードを走る車はクロスカントリー(以下クロカン)と呼ばれ、国産ではパジェロ、ランクル、FJクルーザー、ジムニー、エスクード、フォレスターのみです。

これらの車はひと目でわかります。クロカンは下の図のような角度が重要視されます。
デパーチャーアングルとアプローチアングル

ランプブレイクオーバーアングル
この角度に余裕がないと、障害物を乗り越えられないからです。
メーカーのウェブサイトを見ればすぐ分かりますが、クロカンにはこの角度が必ず記載され、悪路走破性のアピールポイントとなっています。一方、SUVには記載がありません。

他にもトランスファーやデフロックもクロカンだけに備えられた機能で、オフロード走行には「必須」です。SUVにはありません。

更に4WDはファミリーカーのほとんどで選択可能であり、SUV固有の機能ではありません。

まとめ - 仮に山に出かけるとして

以上、SUVのメリットがひとつも無いことを解説してみました。

例えば山奥深くにアウトドアへ出かけるとしましょう。

山奥とはいえ、日本では道路が整備されています。そもそもSUVはオフロードを走ることが出来ませんので、道路が無ければSUVでも行けません。
従って、ここまではどの車でも可能です。

また、山奥では道路が狭くなります。前を走る軽自動車は簡単にすれ違ってどんどん進んでいきますが、SUVではそうはいきません。

さて雪が積もってきました。しかしスタッドレスタイヤの進歩は目覚しく、FFでもFRでもスタックしているクルマは見当たりません。そういえば北海道のタクシーだってFRです。
もちろん4WDのほうが有利ですが、軽でもミニバンでもワゴンでもセダンでも4WDがあります。

このように、「SUVでよかった」という状況は絶対に発生しません。

安いSUV(200万円)から最も高い4WDの軽(150万)に変えても50万浮きます。50万あれば北海道へスキー旅行が何回できるでしょう。
最高のボードとウェアを買うことも出来ます。
暖かいテントや寝袋も買えますね。

アウトドアが目的であれば、どの車でも出来ます。
オフロード走行が目的であれば、クロカンを買いましょう。

2014年1月4日土曜日

オイル上がり/下がりって何?

オイル上がり、オイル下がりという言葉をたまに聞くと思います。
これって何でしょう。エンジンの不具合みたいだけど……なんて事はないでしょうか。

オイル管理を適切に行えば遅らせることは出来きますが、永久に防ぐことは出来ない症状のひとつです。愛着の湧いたクルマを長く乗りたいと願う諸氏は知っていても損はありません。というわけで、オイル上がり、下がりに分けて解説したいと思います。


オイル上がり

まずオイル上がり。こちらは簡単なので文字だけで済ませてしまいます。
まず「どこに」オイルが上がるのかですが、燃焼室に上がってきます。
上がってくるということは下からやってきます。

つまりピストンの下、クランクケースからです。
通常クランクケースから供給された(と言うと格好が良いですが、飛沫として飛んでくるだけです)オイルはシリンダーにたっぷり付着します。それをピストンに装着されたオイルリングが適量に掻き落とします。そのため、潤滑を維持しながらも燃焼室には不必要にオイルが入り込まないのです。

しかし何らかの理由でオイルリングが機能不全を起こすと、掻き落とせなかったオイルがそのまま燃焼室に進入します。オイルが上がってしまいました。
オイルリングの機能不全は、固着・フラッタリング・スカッフィングなどですが、普段から問題の無いエンジンであったのならば、オイル管理やオーバーヒートが原因になります。

オイル下がり

一方オイル下がりはこうです。

シリンダーヘッドの図です。

シリンダーヘッドにもたくさんオイルが供給されており、本来は然るべきオイルラインを通ってオイルパンに戻ります。しかし、図の赤、バルブステムシールがだめになると、オイルをせき止められなくなり、バルブガイドを通って燃焼室へオイルが垂れます。
これがオイル下がりです。

多くの場合、オイル管理が悪いために起こる不具合なのでスラッジなどでバルブガイドもクリアランスが広がっており、症状に拍車をかけている場合が多く見られます。


症状と対策

オイル上がりと下がりどちらが起こっても、燃焼室に入ったオイルが燃えてマフラーからはもくもくと白煙があがります。匂いもきついのですぐに分かるはずです。
これを放っておくと大きなトラブルに繋がります。

オイルが燃えると大量のスラッジが発生しますので、それがピストンリングに溜まり固着を起こすと、エンジンブローに繋がります。従って、出来る限り早く対策するのが好ましいですが、オーバーホール(OH)となるため費用がかさみます。

従って、長く長くエンジンを持たせるのであれば、どこかのタイミングでOHを行えばこれらの症状を防げると同時に、さまざまなマイナートラブルの原因を取り除くことが出来るので一番効率的です。

長く乗りたいと考えている方は、今のうちからOHの費用を蓄えておいたほうが良いかもしれませんね。